2026年No.414(2026年3号、7月)
TOMBO™ No.9003-PFA-UG「ナフロン® PFA-UGチューブ」
高機能製品事業本部 樹脂技術開発部1.はじめに
ふっ素樹脂であるPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)チューブは,純粋性,耐薬品性,耐熱性に優れた配管材料であり,TOMBOTM No.9003-PFA-HG「ナフロン® PFA-HGチューブ」は,腐食性の高い高純度薬液を取り扱う半導体製造プロセスにおいて広く使用されています。
半導体製造プロセスではEUV露光技術に代表される技術革新により,これまで以上に微細な回路形成が実現されています。これに伴い,微小な異物や不純物がデバイス特性や歩留まりに与える影響はますます大きくなっており,半導体製造プロセスで使用される薬液のみならず,薬液供給系を構成する配管に対する清浄度の重要性も増しています。
このような市場の要求に応えるべく,「ナフロン® PFA-UGチューブ」を2020 年に小口径の2サイズで製品化しました。本製品は,「ナフロン® PFA-HGチューブ」と比較して内表面平滑性を向上させることで,薬液の置換特性の向上およびパーティクル滞留の抑制に寄与することが期待できます。この度,市場における多様な用途への適用ニーズの高まりを受け,「ナフロン® PFA-UGチューブ」(以下,UGチューブ)のサイズラインアップを拡充しました。本稿では,その概要について紹介します。
2.製品概要
「UGチューブ」は,従来のPFAチューブとは異なる分子構造を有するPFA原料を使用し,内表面平滑性を向上させた製品です。弊社はこれまで,ふっ素イオン溶出の少ない末端基が安定化処理されたPFA原料を用い,かつチューブ内面の平滑化を可能にした「HGチューブ」,薬液・ガスの透過量を低減させた「SGチューブ」を開発してきました。「UGチューブ」は,これらに続く製品として,原料の分子構造に着目した新たなアプローチにより,さらなる内面品質の向上を実現したものです。標準寸法を表1,外観を図1に示します。従来の2サイズ(呼び径:1/4インチ,3/8インチ)に加え,新たに5サイズ(1/4 インチ厚肉タイプ,3/8インチ厚肉タイプ,1/2,3/4,1インチ)のラインアップを拡充しました。

3.特長
従来のPFAチューブに対して,以下の特長があります。
・チューブ内表面平滑性に優れる
・液切れ性に優れる
・ふっ素イオン溶出量が少ない
・塩酸透過量が少ない
4.評価試験結果
4.1 チューブ内面粗さ測定
4.1.1 試験サンプル
チューブ : UGチューブ,HGチューブ,SGチューブ
サイズ : 1/4インチ(4.35×6.35),1インチ(22.22×25.40)
4.1.2 試験方法
サンプルの内表面を走査型白色干渉顕微鏡で観察し(観察範囲:□50μm),それぞれの観察データの凹凸情報からチューブ長手方向に平均粗さ(Ra)を解析します(評価長さ:50μm)。
4.1.3 試験結果
走査型白色干渉顕微鏡による観察結果を図2に示します。「UGチューブ」のRaは他のチューブと比較して小さく,チューブ内表面が最も平滑であることが確認されました。
図2中の観察画像を比較すると,「HGチューブ」および「SGチューブ」ではチューブ内表面にPFA球晶が確認されました。一方,「UGチューブ」では内表面のPFAの球晶間がなだらかにつながっており,球晶間の隙間がないことから,内表面が平滑であることが示されました。
また,1/4インチと1インチの表面を比較すると,1/4 インチのほうがRaは低い結果となりました。これは,肉厚の違いによる内面の冷却速度の差に起因するものと考えられます。
4.2 液切れ試験
4.2.1 試験サンプル
チューブ :UGチューブ,HGチューブ
サイズ : 1/4インチ(4.35×6.35),1インチ(22.22×25.40)
4.2.2 試験方法
半分に切断したチューブを傾斜させて設置し,着色したイソプロピルアルコール(IPA)を同時に滴下して一定量を流しました。通液速度を指標として,液の流れやすさを相対比較するため,5秒後の写真を撮影し,液の流れ状態を確認しました。
4.2.3 試験結果
液を流している途中の様子を図3に示します。「UGチューブ」は「HGチューブ」と比較して液の流れが速く,液切れ性に優れていることが確認されました。径が異なる場合においても同様の傾向が認められました。したがって,例えば使用薬液の変更や流路の組み換え時など,チューブ内の高純度薬液を切り替える必要がある場合において,内表面に残留した薬液の影響を低減する効果が期待できます。
4.3 ふっ素イオン濃度溶出量測定
4.3.1 試験サンプル
チューブ : UGチューブ,HGチューブ,SGチューブ
サイズ :1/4インチ(4.35×6.35)
4.3.2 試験方法
SEMI F57 およびF40に準拠して測定を行いました。サンプル内に超純水を封入し,85℃で1週間静置した後,超純水を回収し,イオンクロマトグラフィーによりふっ素イオン量を測定しました。
4.3.3 試験結果
表2 にふっ素イオンの測定結果を示します。SEMI F57 規格において,配管におけるふっ素イオン溶出の規格値は20,000μg/m2以下であり,「UGチューブ」,「HGチューブ」および「SGチューブ」のいずれにおいても,ふっ素イオンの溶出量は十分少ないことが確認されました。また,これらのふっ素樹脂材料は末端基が安定化処理されており,未端基の処理されていない「PFAチューブ」と比較して,高純度薬液の品質維持に寄与することが期待されます。
4.4 塩酸透過量測定
4.4.1 試験サンプル
チューブ: UGチューブ,HGチューブ,SGチューブ
サイズ :1インチ(22.22×25.40)
4.4.2 試験方法
図4に示すように試験装置を組み,チューブ内部に37%塩酸を充填した後,試験装置内に超純水を入れて70℃に保持しました。試験開始から14日後および28日後に,超純水中の塩素イオン濃度を測定し,塩酸の透過量を算出しました。
4.4.3 試験結果
各チューブの塩酸透過量の結果を表3および図5に示します。「UGチューブ」は,「SGチューブ」と比較して約84 ~ 89%,「HGチューブ」と比較して約91 ~ 94%透過量が低減しました。
したがって,半導体製造工場における環境負荷の低減および安全性の向上に寄与することが期待できます。

5.用途
半導体・液晶製造工程における高温かつ腐食性流体の薬液配管用途に適しています。特に,先端半導体プロセスにおいて高純度薬液の汚染低減が求められるハイエンド用途に最適です。
6.おわりに
本稿では,弊社PFAチューブの最高グレードで ある「ナフロン® PFA-UGチューブ」について紹介 しました。「UGチューブ」は,内面の平滑性,液 切れ性に特に優れた,弊社最高ランクのチューブ です。今後も,お客さまからのご意見・ご要望を 製品開発および改良に反映し,さらなる性能向上 に努めてまいります。本稿で紹介した「ナフロン® PFA-UGチューブ」に関するお問い合わせは,高機能製品事業本部 事業企画管理部 チューブ 事業推進室までお願いいたします。
*本稿の測定値は参考値であり,保証値ではございません。
*「TOMBO」はニチアス㈱の登録商標または商標です。
*®が付された名称はニチアス㈱の登録商標です。
